ライフ。
いっかい死ねばそれで終わり、とは限らない。
神奈川某所のとあるアパートの二階で独りで住んでいる。ペットは不可。
嘘をついた。
厳密には独りではない。
実は、この家にはもう一人いる。
こいつだ。
豆苗だ。
…
豆苗の話をするために時を遡る。
神奈川県は某川沿いのアパートに最近引っ越し、いまはかれこれ三カ月ほど。
引っ越した初日、大家さんの所へ挨拶に行った。
相当なお年でありながらもこぎれいな身なりで凛としたおばあさん、第一印象はそんな感じ。その後も色々と暮らし始めの面倒を見てくれた。
彼女は電話をしても、会いに行っても、本当にいつも笑っている。そういえばこの人の黒目って見た事あったっけな…?ってくらいにはオールウェイズなスマイルである。
その後、大家さんから自身の身の上を少し聞いた。なんでも旦那さんの病気がかなり進行していてもう一人では動くことが出来ず目も見えないらしく。だから、彼女は日中はずっと旦那さんのそばを離れずに介護していなければならない。”もうほんと大変でぇ〜”と言いつつそりゃもうニッコニコ笑っている。
ライブの帰り道にすれ違い、”いやねぇ、近所のスーパーに牛乳一本買いに行くにもこんな夜中に出なきゃいけなくて大変なのよォ〜”といいながらやはり笑っている。
”でもね、こんな感じで夜中も起きてるからっ、酔って鍵無くして帰ったりしたら呼んでちょうだいね〜〜〜!”
最初から最後まで愛想MAXの笑顔だし、この日大内が絶対に鍵だけは無くさないことを固く決意したのは言うまでもない。
その後もたびたびすれ違って挨拶をする。
ある日、目の見えない旦那さんの手を取って散歩をしているところにも出くわした。彼女はやはり笑っていた。ただそれは少し種類の違う、もっと優しく穏やかな笑顔だった。
その日は何となく、気付かない振りをしてすれ違った。
歩きながら色々ものを思っていた。
月並みだけれど無常観。人はいつかいなくなる。笑ってる人にも泣いてる人にも同じ終わりが来るんだよなあ。
そんなことを考えながら、その日の夕食の材料を買いに辿り着いたスーパー。
なんとなしに手に取った野菜の袋。
裏の説明書きには
”切った後の苗に水やりや。また穫れるで”
の旨の文言。
!!!
お前…
不 死 身 か よ …!
これがおれの豆苗との邂逅。
100円玉で買えていいの?こんな永遠の栄養
無常の世界で発見 このエンドレス野菜製法
製法。
Ho
Say Ho Ho
Ho Ho
ラップかよ
あ、コスパ良いじゃん買お!って思ったのもある。8割くらいは。
豆苗だ。
不死身なのでフェニックスと名付けた。
フェニックス収穫祭は二度盛大に行われた。(鶏肉と一緒に食べた)
ただ残念ながらこいつは本当に不死身というわけでもないらしく、多くて二度復活までなのだと調べてみてわかったから2代目はクリリンって名前に改名した(名前の由来がわからない人はお手数ですがドラゴンボールを読もう)。
今日うちに帰ったら、生えてました。
↑クリリンに。
↑生えました。
なんだろう。
必要以上に嬉しいな。
そしてすげえな豆苗。
人生は一度きりだが、奴らにはアンコールがある。
でも。
よく考えたらわりと作物全般にいえるな。
次回こそは、バンドの事とか書こうかなとは思う。